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そして君は桜の東京へ [家族]


週末…荷物と息子を東京へ送っていく。

この街の桜は…
膨らんでいるが…まだ蕾である。

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桜が蕾の田舎から…
満開の東京へ…


朝になってから、あわててバタバタと用意する息子…

自分「早くしろっ!」
息子「してるよ…」
自分「なぜ昨日までに用意しておかないっ!」
息子「やったよ!」
自分「やってないから、今してるんだろっ!」
息子「やったけど…間に合わなかったんだ…」
妻「口じゃなく手を動かして…ある物から車に積んで…」
手伝っている妻が横から割ってはいる。

我が子ながら、いや我が子だからこそ…
要領の悪さといい加減さに腹立たしくなる。

互いに不機嫌なまま、車で出発。
妻だけがいつも変わらぬ暢気な口調で…
桜の開花の話などをしゃべり続けていた。

バックミラーの中の息子は…不機嫌なままである。
それでも、いつもならすぐに寝てしまうところ…
しばらくは見納めの田舎の景色や山並みを眺めていた。

TVドラマのような…
しみじみと過去を懐かしむような親子の会話もなく
車はやや混みはじめた高速道路を東京へと向かっていく。

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東京の桜は満開でした。

欅もうっすらと芽吹いていて…
若々しく春の生命を感じさせてくれます。

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荷物を片づけて…
少しだけ空いた時間に神田川沿いの桜を眺めに行く。

今まさに満開…

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東京にも春はきて…
この街にも桜は咲いている。

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息子よ…
ここにも咲いている花がある。

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君もここで…自分が咲く場所を見つけなさい…

すべての片づけが終わって…
大家さんへ挨拶を済ませて、アパートを後にする時…

自分「じゃあな…」
妻「しっかりやりなさいよ…」
息子「うん…」
相変わらず…無愛想である。

動きだそうとする車のミラーに…
照れくさそうに…困ったような顔で手を振る息子が写っていた。

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「バイバイ…」小学生のような息子の声が聞こえた気がした。

残念ながら…ここでもドラマような別れにはなりませんでした…
強いて言えば…帰り道の妻が…
すっかり無口だったことくらいです。


TVドラマと言えば…
「君は海を見たか」のある場面が記憶に蘇る…
あれは…そう…ショーケンの台詞だったかなぁ…

仕事に追われ、家庭を顧みなかった父と
不治の病に冒された幼い息子の物語だった。

初めて父が息子に正面から向きあって語る…

「...高校でもサッカーをやり続ける。勉強なんか出来なくっていい。
 (ふるえて)お前は大きくなり、背もパパぐらい高くなる。
 それからお前は大学を受ける。勉強なンかする必要はない。
 名門校なンか関係ない。浪人することも全然ない。
 お前はその時の出来に応じた、最低の大学に入ってくれればいい。
 大学に入ってのびのびとやり
  (この声次第に涙声になり、やがて絶句する)
 そしてお前は二十歳になる。二十歳になったらパパとバーに行く。
 バーで俺たちは一緒に酒を飲む。パパとお前は二人だけで話す。
 お前はその時恋をしている。お前ははにかみながら、
 その少女のことを、パパにおずおずと切り出してくる。
 その娘はきれいだとお前はいう。気だてのいい娘だとお前はいう。
 逢って欲しいとお前はいう。その時パパは........その時........パパは........」

決して二十歳になれない息子に…
父が涙ながらに語りかける未来…希望…です。
切なくて…今…想い出しても…胸が熱くなります。

今日が明日へと続いていくことが当たり前と思っているけれど…
明日があること…それが…どれほど幸福なことか…
噛みしめずにはいられなくなる物語でした。

自分も…息子に多くは望みません…
立派な人間になどならなくていい…
あたりまえに生きて…あたりまえに生活する…
少しだけ善人になってくれさえすれば…それで十分です。

なにより…ここまで生きてくれたことに…
父は…感謝している。
やがて二十歳になるおまえが…
無理に一緒にバーに行くことなどなくていい…
ただ生きて…二十歳になってくれれば…
父は…それで十分なのです。

息子よ…ただ生きていてくれ…
それだけで…父は十分に幸福です。


今日も訪ねてくれてありがとうございます。

今旅立つあなた…
明日は、まっすぐ未来へと歩きはじめますように…
おやすみなさい


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コメント 13

こうちゃん

「君は海を見たか」、僕も見ていました。
たしか、平幹次郎が父役だったと思います。

門出、おめでとうございます。^^*
by こうちゃん (2008-03-31 00:32) 

ほんのり

桜の中の新生活の出発、おめでとうございます。
東京もなかなか捨てたmonoではありません。
きっと、息子さん東京の良い所も、悪い所もしっかりと見つけて4年間を過ごす事でしょう。

親からの自立の時があって大人になるんだろうな~~~。
親は心配で、危なっかしくてハラハラしますが、見守る事しかできませんものね。

神田川の桜、本当に綺麗でしょう。
もうちょっと上流の方、下落合とか小滝橋周辺だと、人はまだ少ないです。
桜も、少し若いですけどね。

奥様が淋しいと想いますよ。 お父さん以上にね。
毎日の買い物に行って、「あ、あの子の好きなmonoが安くなってる。あ、でも要らないんだ。。。」と毎回、胸が痛みました。
by ほんのり (2008-03-31 02:52) 

ちょんまげ侍金四郎

お疲れ様でした
昔、親に言われたこと
最大の親不孝とは、親より先に死ぬこと
親になって、しみじみ思いますね。。。
by ちょんまげ侍金四郎 (2008-03-31 08:31) 

ミヤ

息子さんの晴れの門出、おめでとうございます。
by ミヤ (2008-03-31 10:27) 

こぎん

かつて、そうして見送られたブドリさんなのでは?
見送られ、見送り・・・繰り返していくのですね。
by こぎん (2008-03-31 10:48) 

タックン

東京の この日の 満開の桜を 
息子さんも決して忘れないと思います。

子どもの旅立ちを見送るお二人の思い・・・
そういうものなのですね・・・胸にぐっときてしまいました。
by タックン (2008-03-31 20:54) 

夜波音

 神田川のこの場所・・・2年前までよく通っていました。
 満開ですね(^^凄く綺麗!

 子供の巣立ち・・・奥様の方が寂しいのでしょうね。
by 夜波音 (2008-03-31 21:14) 

jewel

しみじみ読ませていただきました♪
本当に、都会の桜はまさに今が絶頂!
なんて綺麗なんでしょう。
息子くんを見送り、グスコーさんにとっても
忘れられない都会の桜になりましたね^^
by jewel (2008-03-31 21:47) 

selybar

皆、こうして門出を迎えるのですね。
大切な想い出になります。
窓の下には神田川・・・胸いっぱいの学生生活が始まります!
by selybar (2008-03-31 22:01) 

mamire

GUSUKOーBUDORさま、こんにちは。
サクラが満開の中で、ご子息様の新しい門出おめでとうございます。
大丈夫、きっと立派に過ごしていけます。
東京の人は心があったかいのよ。
by mamire (2008-04-01 16:40) 

GUSUKO-BUDORI

こうちゃん >
そう…映画は天知茂だった…と思う。

ほんのり さん>
そうなんでしょうね…
やっぱり妻は寂しげです。

ちょんまげ侍金四郎 さん>
ほんとにそうですね…
若いときの無鉄砲が、どれほど親不孝だったか?
今はただ反省するばかりです。

ミヤ さん>
ありがとうございます。
遅ればせではありますが…やっとです。

こぎん さん>
そうですね…そうして…
つながっていくんでしょうかね。

タックン さん>
桜が満開だったのだけは忘れないでほしいです。

夜波音 さん>
こちらに通ってたのですか?
巣立ち…早く独り立ちしてほしいのですが?

jewel さん>
はい…東京の桜…とっても綺麗でした。

selybar さん>
どんな経験もしないより…
したほうがいいのかなぁと思います。

mamire さん>
はい…あったかい心に囲まれて…
すこしでも成長してほしいです。
by GUSUKO-BUDORI (2008-04-01 23:44) 

ヴォイス

新生活が始まったのですね、僕の頭んなかでは20歳のころも、今も、行ったり来たり考えては溜息ばかり。お醤油、お味噌といわず気軽に声をかけて下さいね。
by ヴォイス (2008-04-05 12:05) 

GUSUKO-BUDORI

ヴォイス さん>
ほんとにありがとうございます…
いつかお言葉に甘えることがあるかもしれません。
よろしくお願いします。
by GUSUKO-BUDORI (2008-04-05 19:04) 

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